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「2−305!!」展示会場設計について

建築学科研究室 前崎紀人



今回助手展の展示会場となる2号館305室(北側半分)は、面積が約30m2と、決して広いわけではない。この2号館という建物自体、廊下も広く、大きな中庭を持ち、全体的にラージスケールな建物なので、この部屋に入った時はなおさらこの部屋が小さく感じられる。しかも窓面もほとんどなく、明るくはなく、いわば「とても室内っぽい室内」という印象を受けた。ここでいう「室内っぽい」というのは「室内でよく見かける景色を持った」とか「プライベートな」とかいう意味である。もちろん、それはごく当たり前のことで、外部廊下に面している扉を開ければ「室内っぽい室内」というのは当然目の前に現れるはずだ。アトリエとか、研究室とか、オフィスとか・・・。であれば、外部廊下に面している扉を開ければ、「室内っぽくない室内」というのが現れたらどうだろう?というのが今回、僕が興味をもった事である。つまり、この部屋が持っている性格とは全く逆方向な性格を持った空間の方へベクトルを向けていくという作業である。
 そこで最初に考えたことは、空間全体をとても明るくする事である。室内、室外ということで考えると、普通は室内の方が室外よりも暗いわけだから、それを室内と室外を同等の明るさに近づける。その為に床・壁は全て白く塗装した。扉を開けて中に入っても、明るさの感覚としてはまだ外にいるような感覚が残っていればと思った。あと、床の仕上げは砂利(2号館中庭に敷かれているものと同種)を敷いている。これは、室内ではあり得ないほどのラフな仕上げを床に求めた為にここでは使用した。室内の床は普通フローリングとかコンクリートとか、きめの細かい物が主流であるが、それとこれとは真逆の物である。あと、壁の白く塗装された部分は天井(床から4.1m)までとどいていない。中途半端な高さ(3.6m)で止まっている。これはこの部屋の面積に対して、4mを超える壁の高さは少し圧迫感がでることを懸念した為でもあるが、壁の上部と天井を白く塗らない事で、相対的にその部分が暗くなり、背景として奥に消えて行くことを望んだ。天井があるからそこは「室内」なのであって、その天井の存在が希薄になっていけば「室内っぽさ」も希薄になっていくのではと考えた。
 しかしながら、どうして自分は、ここまでしてこの部屋の持っている特質の真逆方向である、「室内っぽくない室内」というものを実現したかったのだろうと最近よく考える。それが果たしていいことなのかどうかもわからない。けれども、現実に僕らが持っている、室内にいる時の感覚って人それぞれだと思うのだけれど、そういった普段気にもしていない、疑いもしない自分の感覚について、この機会に考え直してみるのはアリだと思った。何か物を作る時は往々にしてそういう事から始まる。そして終わってみれば、いわゆる「美術展会場」のことはほとんど考えていなかった自分に気がつく。