竹内優美助手(工芸工業デザイン学科テキスタイル研究室)インタビュー
聞き手:中川裕孝氏(作家、本学非常勤講師)
竹:テキスタイルというときのイメージ、いわゆる「染める」とか「織る」ということには全く興味がなかったんです。むしろ立体に対する憧れがあって、布で自立するものが作りたいなぁと思って、学部の頃からずっと取り組んできました。やればやるほど、繊維、布自体が好きになっていきました。繊維の持っている良さがやるうちに分かってきたんです。
・布が持っている良さってどんなところですか?
竹:どうしてこうした作品を作っているかというと、布は本来自立しないからそれを無理矢理加工して立たせることはしたくなかった。むしろ、何か支持体のようなものがまずあって、それに関わる布、そのときにできる布のカタチがいいのかもと感じているんです。
中:全部オリジナルテクニックですべてを加工してつくる作家もいます。ファイバーアート、繊維造形といった広げた言い方をすれば。糸や布や繊維を使っていれば、どんなことでもやっていい世界なんですけどね。
竹:私はそこにはあまり興味がないんです。いろいろできますけど、私は無理矢理ではなくて、何かと関わることで存在する布が好きだし、それが布の在り方ではないかと。鮮やかな布の在り方というか姿をみせたいです。
・たとえば椅子のために布張りするみたいなことですか。
竹:もちろんそれも1つの布の在り方です。
中:あのかたちはどこから来てるの?あれは椅子張りとかいった実用的なものとは違うでしょ。自分で決めた、ある意味、詩のような世界でしょ。
竹:いっぱい描いて決めます。
中:ほんとにたくさん描いてますね。見てわかります。だから、語りかけてくるものがある。それがいいんだ。
・かたちを作っているときに、布の色や模様はすでに決まっているんですか?
竹:同時くらいです。作りながら決まっていく。線や形や色がその次を呼ぶ、みたいな感覚です。
中:どんどん描いているうちに、選別も同時にしていて、一気にできあがるんだな。
・たくさん描くことの動機は何ですか。
竹:考えたことないけど、当然のように、食欲のように要求してしまうんです。
・作品は、造形に徹しているものですね。何かの機能のためではなくて。
竹:私は「布の造形」って言ってるんですけど。
・テキスタイル専攻の中で、竹内さんのような作風は珍しいですか。
中:似たようなタイプであっても、他はもっと複雑な柄とかたちかな。1個に時間をかけているタイプの方が多いですね。これだけ単純、シンプルな作風はあまりいないかもしれません。
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)