杉本雅子助手(基礎デザイン学科研究室)インタビュー
聞き手:谷口吾郎氏(自然教育研究センター)
・今回のリニューアル展のカタログに載っている作品はいつ頃のものですか?
杉:大学院の修了制作です。
・学部の卒業制作はどういったものだったんですか?
杉:立体作品でした。
谷:でも修了制作とテーマはつながってるよね。
杉:はい。テーマは同じで「手の動きを視覚化する」ということでした。私は書くこととか記述することについて研究していたんです。書く、タイプで打つ、テンキーで打つ手の動きを、カメラを数カ所設置して角度と位置を出してそれを立体におこしたんです。あんまりイメージできないと思うんですけど。アクリルとピアノ線とスチレンボードで。3人グループでの制作で、今回の展示もその時のメンバーで制作しています。
・「書く」という連続する動きを立体にするんですか?
杉:50音です。「あ」から最後の「ん」までやったので、1個15cm立方のものが50個。
・手の動きに興味をもったきっかけは?
杉:あんまりきっかけとかはなかったような…(笑)。デッサンが、人の身体を描くのが好きだったんですね。課題によっては動いてるものを描いたりするじゃないですか。それが面白くて、でも身体全体だと大きいから手にしようかな、とか。手には癖というか、その人らしさが出たりするんですよね。それは修了制作のほうが反映されてると思います。顔が見えなくても動きで「その人だな」ていうのがわかったりもするし。そういうことに興味がありました。
谷:修了制作はモーションキャプチャーだったっけ。関節部分に電極をつけて動いてもらって。静止してるところはボワーってぼやけるんだっけ。時間とともに。
杉:そうです。
谷:そうすると滲みが水墨画みたいにかたちができていく。
・その滲む仕組みもつくられたんですか?
杉:仕組みはないですね。1枚1枚、全部つくりました。
谷:あ、モーションキャプチャーじゃなくて、アナログでやったんだっけ。
杉:そうなんです。モーションキャプチャーできるところに行ったんですけど「できない」と言われて(笑)、断念して、自分でやりました。でもその時に電極をつけるポイントのデータをもらったので、それと同じように自分でつけました。
・では1コマ1コマ、付けているポイントを手がかりにアニメーション化していったんですか?
杉:はい。ものすごい手作業です、これ。
谷:そうだったんだ…(笑)。
・これは全身なんですね。
杉:そうですね。でも基本的な動きだけで、歩くとか、座るとか、起きるとか、階段の昇降とか。20人くらい撮ったんですけど、7人分くらいしかやってないです。できなくて(笑)。でもこれを試験的に見せてみたら、知っている人はこの動きだけで誰だって判ったりして面白いです。
谷:個人の特定ができるっていうこと?
杉:そうです。歩き方に特徴がある人は「これ○○君でしょ」って。
・人の動きを抽象化するのに、手がかりにしたポイントはどれくらいあったんですか?
杉:いくつだったかな。結構ありましたね。20カ所以上。
・どこに一番特徴が出るんでしょうね。
杉:角度と速度、ですかね。手を上げる角度とか、足を上げる角度とか。姿勢もそうですね。撮るときに多少みんなぎこちなくなってましたが。
・この修了制作も、デッサンが好きだったことの延長だったりするんですか。
杉:今考えればそうかなっていう感じで、その時はそこまで意識はしてなかったですね。学生のときに佐藤雅彦さんのDVDを見たんです。点が1点しかなくて、その1点の動きだけでそれが蝶なのかトンボなのかが判るっていう作品があって。そういう表現方法も面白いなって思ったことはあります。明確にかたちは見えてないけど、もっと違う要素でそれが何なのかが判るっていうのは面白いなって。
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)