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野村由多加助手(空間演出デザイン研究室)インタビュー
聞き手:森豪男教授(空間演出デザイン学科)

・これまで、どんなものを作ってこられたんですか?

:家具をつくってきました。「家具そのもの」をただ見るんじゃなくて、「家具があることによってできる空気感」含めてつくっています。それは演劇的なシーンをつくり出すような生活ができないかな?ということを僕はいつもテーマに持っています。 日常を写真で切り取ったとき、すごく劇的な瞬間ってあると思うんですけど、そういった瞬間を増やす役割が家具にはもっとあるはずで、でも今その役割が家具自体からなくなってきているんじゃないかな、と思っています。だから、家具として実際には使えなかったりしても、そういった「シーンをつくり出すもの」になればいいなと思います。

・その「使えない」というのは家具の機能が備わっていないという意味ですか?

:機能というのも人によって解釈が違うと思います。「使う機能」に関しては、こうした方がもっといいのにな、といったアイデアはたくさんあるんですけども、使い心地も含めてそれ以外のものがこれから大事なんじゃないかなと思います。 うまく言えないんですけど、心に機能するというか…そういう感じだと思います。

・やはりそれは彫刻作品やオブジェではなく…。

:家具ですね。僕がなぜそういった彫刻やオブジェを作らないかというと、自分の表現をしていけばしていく程、どんどん自己顕示欲みたいなもので塗り固められていくんですよね。それが耐えられないというか、それは生活には直結しないというか…。もっと中間的な存在じゃないとダメなんです。例えば自然の絵を描きたいと思ったときに、あまりにも自分の気持ちをそこに込めた作品は、自然と自分を繋ぐものにはならないと思います。家具も同じで、あまりにも自分を込めすぎると、仲介者にはなってくれない。そういう感覚が僕にはあります。 なので、あくまで家具です。自分と自然を仲介するもの。その真ん中に立てるのが家具なんじゃないかな…。彫刻や絵画でもそうしたことはできるんでしょうが、僕の場合は絵画などに自分を込めると、グロテスクなものになる気がします。自己主張が固まったものは「使える」道具にはならないんですよね。

・ある場所に置かれて、とても収まりがよいとか、場を満たしているといったものは、野村さんだけに留まらず、もっと必然性や普遍性があるということでしょうか?

:そうでしょうね。韓国の古い家具なんかを見ると、神様のため、自分の心のために作った家具が多いので、自分が表現したいという欲求のもとでつくっていないように感じます。だからその家具は、自分と自然の中間の位置に立てると思っています。 今までモノとかアートとか、つくることで進んできた道っていうのは、ずっと「自分の表現や主張を発信する」ということをやってきたと思うんですけど、これからはちょっと変わって庭のように「共存」みたいなところに行くような気がしていて。家具の役割としては、真ん中に位置する繋ぎ役になってくれたらなと思っています。

・卒業制作はどんなものをつくられたのですか?

:紙を使って、こう…。そこまで表現しないというか、手を加えない。手を加えるけど、加えすぎない。そういうところを表現したかったですね。いま思うと。
:まさに家具なんだよね。「空間的な家具」だね。


・「空間的な家具」というのは、どういったものでしょうか?

:うーん(笑)…家具というものは、あまりにも貶(おと)しめられているという現実があってね。家具を評価するのに、「使いやすい」「使いにくい」というような概念で評価がなされることが多いんです。しかしそれは、家具の持つ役割を非常に貶(おと)しめているような気がして仕方ないですね。家具が使えるのは当たり前のことで(笑)。椅子であれば座れるわけだし。座れなければ、それは椅子とは違うものだというだけ。 例えば、岡本太郎が座ることを拒否する椅子という作品をつくったけれども、現実にはあれは座れるんですよね(笑)。安易に、いい加減に座れないというか、これに座ろうとすると、こちら側にもそれなりの精神的な力強さが要求される、という椅子なんですよね。座れない「椅子」をつくっても、それは「椅子」だから座れるんですよね。 やはり、岡本太郎も家具というものが単なる機能だけで評価されるということに憤りを感じていたんだと思います。野村くんが考えているのと同じように、家具を矮小化していない。 そして、家具は身近なもの。触れ合うという点では洋服に近い存在ですよね。 そういう意味で、野村くんの家具は岡本太郎の椅子のように、ひとつのオブジェではないんですけど、言ってみれば「空間の家具・オブジェ」ですよね。人間が生活する空間に対して、大きな影響を与えるものなんですね。野村くんは「空間のオブジェ」を通して、自分の意志を表現しているんじゃないかなと思います。


interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)