長津徹助手(工芸工業デザイン学科木工研究室)
三澤直也助手(工芸工業デザイン学科インテリアデザイン研究室)
丸岡勇太助手(工芸工業デザイン学科ガラス研究室)インタビュー
・工芸工業デザイン学科はかなり早い段階で各専攻に別れますが、三澤さんはどうしてインテリアを選ばれたのですか?
三:入学した時からモノだけでなく空間も含めて学びたいと思っていました。外部の人から見ると、工デってモノだけをつくる学科に思われているかもしれないのですが、インテリアデザインコースでは、住宅や店舗など空間設計も学びます。そのため、椅子などのモノをデザインする時も空間との関係性を強く意識します。同じモノを作るにしても、様々な方法と価値観が存在するのが工デの特徴です。
・現在の活動について教えてください。
三:去年から展示会やコンペに参加しています。家具に限らず、食器等の日用品もデザインしています。
・それは実際にご自分で作られたのですか?
三:僕は制作という事に関してはプロフェッショナルではありません。作品を高いクオリティでアウトプットするために、プロジェクトごとに扱う素材のプロに制作を依頼するケースが多くあります。そのため、図面やスケッチ、模型を用いて自分のデザインを制作者に確実に伝える事が必要になります。
・自分のなかに明確なイメージがないといけないわけですよね。
三:そう思います。曖昧なイメージのまま、制作者に委ねてしまうと、プロだけに、制作者の作品になりかねないのです。制作を他者に依頼しながらも、自分のデザインを実現するために、明確なイメージを持つ事が必要になります。同時に、デザインは多くの場合様々な人との共同作業になります。多くの人の意見やアイデアに耳を傾け、柔軟に作品へ反映させる事が重要だと思います。
・長津さんと三澤さんで実際に共同作業されたことはありますか?
三:作品はないですね。ただ大学一年の時に、木工の同じ授業でスツールをつくったんですけど、その時から長津君は器用でしたね。
長:人並みです(笑)
三:同じ木で同じぐらいのボリュームの椅子をつくったんですけど、なぜか長津君がつくった椅子は軽くて、僕のは重かったんですよね(笑)。その授業で、長津君はつくるのがすごく好きで得意なんだなぁ、って良く分かりましたね。ただ僕もつくる事が大好きで、デザインする時には模型をいっぱいつくります。最終的な陥穽に少しでも近いところでデザインを検証していきたいので、できる限り精巧な模型をつくるようにしています。誰かが言っていた言葉なのですが、「創作は思考の結果ではなく、行動の結果である。」そうなので、僕は頭以上に手を動かしデザインをしていきたいと思います。
・では、長津さんが木工を専攻された理由は?
長:漠然とですが、家具をつくりたいなあと思ってていました。工デは入学してすぐに、それぞれの専攻の授業をとれるのですが、最初に受けた授業が手を動かす授業じゃなかったんです。
・調べたり知識を集めることを目的とした授業だったんですか?
長:そうなんです。それがどうも僕には合わなくて(笑)、もともと僕は手を動かすことが好きだし、得意なんだったんですよ。で、その次に木工の授業を受けたんですけど、そしたら「これだよっ、これだ」って思いました。楽しかったんですよね。別に木にこだわっていたわけではないんですけど、本格的に「ものづくり」というものに初めて触れたのが、予備校の先生の木工作家としての活動であったり、大学に入って最初につくった作品の素材が木だったこともあって、自然と木工に進んだんだと思います。やっぱり考えるよりも手を動かした方が、僕の性に合っていたんですよ。木といってもいろんな種類があって色も木目も違って、そういうところは魅力的でしたね。
・木のいいところは?
長:木という素材は、なかなか思うようにならないし、もちろん僕に技術がないというのはありますけど…。木は生き物ですから反ったり、目を離すと曲がったりするのは腹がたつけど、そういうところも楽しいですね。それに、そういう難しい素材を使って自分で考えたものを、自分自身で形にできる良さもありましたね。
これまでも、どちらかというと考えるということが嫌で、避けていたことはありましたね。たとえば誰がつかって、どういう場所でつかわれるのかというようなコンセプトワークは苦手だったために、つまらなく感じていたし、苦手なことは敢えてしなくてもいいかな、と思っていました。それでそのまま現在に至ります。
自分で考えたものが、自らの手でモノになったときというのは、やはり僕にとってはすごく魅力的なことです。紙のうえに描いたり、CG上で表現するのではなくて、実際に現物としてできあがったものを前にしての喜びは、次の制作へ向かっていく気持ちにつながりますから。
なんて言ったらいいのか…、僕は手を動かさないとイライラしてしまうんですよね。僕の場合は考えていても仕方がないので、図面もあまり描かないで、実際にモノをつくりながら、考えながらつくる方法をとっています。もちろん失敗もあるのですけど。
ものをつくるのに、ものと空間の関係について考えることが切り離せないぐらい重要なことはもちろん僕もわかっていますよ。インテリアの人たちみたいに、考えられたらいいのになあって思っています。
三:本当に?
長:うん、本当に。ただ、僕はそれでもモノの側にこだわっていきたいなあって思っています。
・丸岡さんがガラス専攻に進まれた経緯は?
丸:僕はもともと空間的なことをやりたかったのでインテリアを志望していたんです。一年の時に受けられる工デ各専攻の授業も、かなりインテリアの授業をとりましたね。あと陶磁の授業とかも。ガラスに関しては全く考えてなくて「絶対やらないなぁ」って思っていたんですよ(笑)。でも、「素材に触ってないなあ」って思ったのと、せっかく美大に来たんだから、工房が使える方がいいよなぁって思うように変わっていったんですよね。
それまではモノを空間に当てはめていくことに興味をもっていたのですが、ある先生が「モノが空間をつくることだってできる」と言われたのを聞いて、段々と「俺もそういうモノをつくりたいなあ」と思うようになって、器とかに興味が出てきましたね。それにもともと空間に興味があった関係で、照明や光もやりたいなと思っていたこともあって、光をモノにするなるなら、ガラスだなあと思いましたね。で、いよいよ専攻を決めなきゃいけなくなったときに「ガラスだ」って。
・直感ですか?
丸:ええ、直感ですね。でも、いざガラス専攻に入ってみるとつまらなかったですね(笑)。当時はエスキースとかいっぱい描いて、つくりあげたとしても、全然考えた通りの形になってくれなかったんですよね。授業の課題をこなしたり、学外の工房にでかけたりして、徐々に基本技術を得ていったのですが、それでもまだつまらなかったんですよね。教えられたことしかできなかったので。
あるとき、技術的なセオリーをいっさい無視して、自分で遊びながらいろいろなことを試してみたんです。それがすごくおもしろくて、やっと「素材を触っている、手で触っている」っていう感じがしたんですよね。
溶けているガラスを振ってみたら伸びたり、上を向けたら縮んだり、というようなことですね。当時は技術のことばかりで、そういうことすらも思いつく余裕がなかったんですけど、その時がきっかけになっていろんなことが見えてきて、今につながっている気がしますね。
・それはいつぐらいのことですか?
丸:学部4年の頃ですね。学部の頃は、わりと実用性やデザインについてはあえて忘れて、素材のおもしろさが出るようなアート寄りなものをつくっていたのですが、大学院に入った頃から「うつわ」をつくりたいと思うようになりましたね。それは、つかえる器もそうだけど、つかえない器もおもしろいかなあと思っていました。もともと光がテーマだったので「ものじゃなくて光が入れば、それも器なのでは?」って思ったんですよね。素材の美しさがそのまま出て、つかえる器ではない、というのは今でも続いているテーマですね。
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)