槙原泰介助手(油絵学科油絵研究室)インタビュー
聞き手:佐塚真啓氏・長谷川翔氏(3番ギャラリー主宰、本学油絵学科4年)
・最近の作品には一貫したコンセプトなどがあるんですか?
槙:うーん、インスタレーションの解釈を最近の作品はかなり還元してますね。作品をつくると言葉にあたるというか、「彫刻的だね」とか「絵画的だね」って言われる中で、最近は「インスタレーションだね」って言われるからかもしれないけど。その「インスタレーション」の概念を還元しようとしていて。「設置」っていうのが原義だと僕は思ってて、別に辞書が信用できるわけじゃないですけど、調べると「セッティング」とか「装置を設置する」っていうのが出てくる。ものを設置することと、設置した空間に立つっていうことの動きというか…。体感とも言いたくないんだけど、自分に設置されたり、直接触れたりしてるわけじゃなくても、それによって感覚が曲げられるというか、そういう体験ができるような作品にしていきたいな、と思ってるところです。
・ものを選択する基準、みたいなものはあるんでしょうか。
槙:意味が強いものにわりと惹かれるかもしれないですね。機能が強いというか。
佐:同じものを使うことはあるんですか?ここで使ったものをまたどこかで使うとか。
槙:いや、あんまりそれはない。
佐:ですよね。そういうのなくて、今までの作品見てても全部違うじゃないですか。槙原さんぽい、っていうのはあるけど。全部違うものを持ってきてるから、どういうふうにそれを槙原さんがやってるのか、ひとつはひとつとしておしまいにしてるのか、それともストックしておいて、またいつか使う日が来る、みたいな感じでレパートリーを揃えてるのか、っていうのが気になりますね。ずっと新しいものでやるのか、とか。昔のガムテープの作品なんかはひとつ、ひとつって繋げてるような気がするけど。今は「槙原さんの感じ」で繋げてるような気がして。このあいだの『ルームランナー』(※1)『ロードランナー』(※2)も、同じような感じなのに、それぞれ全然違って、でもどっちも槙原さんらしいなって。「ぽさ」って見る方が感じるだけかもしれないけど、でも槙原さんも意図してやってる節は絶対あるだろうし、そこがどういう感じなのか。
槙:「ぽさ」って、あんまりわかんないんだよね、自分で(笑)。「ぽさ」の共通点と、『ルームランナー』『ロードランナー』って言葉の連続性はまったく違うもので、だから自分の中で『ルームランナー』『ロードランナー』っていう風には意識できるんだけど。「ぽさ」の連続性かあ…。
佐:無意識的にも、槙原さんがさっき「機能が強いものに惹かれる」って言ってたみたいに、そこをポイントとして選んでるっていうか。
槙:でもあえて言葉にしなかったりするかも。「ぽさ」を客観視しようとすると。
佐:それに引きずられちゃう感じはしますよね。そのテーマに沿ってものを集めてこなきゃ、って。ここで展示してくれた作品(※3)も、はじめから言葉にはしなくて、「後からどう見えたか」っていうテキストだけを使ったじゃないですか。槙原さんってそういう感じがするなって思って。僕らは槙原さんのこと知ってるから、作品を見る時も槙原さんていう人を想像してみるから、違う作品を見る時も想像して見るから、それで僕らは繋げられるけど、槙原さんを知らない人はどうやって繋げてるんだろうっていうのは全然わからないし、いつも不思議に思うっていうか。そのあたりを槙原さんは本人としてどう意識してるのかなと思って。
槙:うーん、時間が経つとわかったりする。あの時考えてたことと、これって結構関係あるな、とか。でもその接続は自分がいま無理にやらなくてもいいとは思ってる。けど、今回の『ルームランナー』『ロードランナー』は、あのまま言葉の意味としてコンセプトにはなってないけど、確実につくる前から自分への規制になってて。あの言葉は偶然発見したようなもので、ほとんどダジャレに近いんだけど(笑)、もちろんそれを並べた上でやるっていうことを自分の中につくったから、意識はするけど。
佐:タイトルから入った展示だったんですか?あのふたつ。
槙:うーん、タイトルからではないけど。何て言うんだろうな…。アイディアを貯めてるなかで、例えば隣り合わせになってるアイディアとかあったりするじゃない?それをポンって出せるかな、とか。一緒に出せたら面白いかな、という思いが強かった。
佐:アイディア、どのくらい今ストックがあるんですか?
槙:ストックですか。言えないよー、それ(笑)。
(※1)「Room Runner」(旧坂本小学校)2008
(※2)「Road Runner」(表参道画廊 MUSÉE F)2008
(※3)「Henry」(3番ギャラリー)2008
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)