河野通義助手・山田毅助手(芸術文化学科研究室)インタビュー
聞き手:沢田雄一氏(美術資料図書館)
・展覧会のドキュメンタリーを撮ろうと思ったきっかけについて。
河:そもそものきっかけは、美術資料図書館の沢田さんが、昨年行なわれた「ムサビと絵本」展が終わった時に、「記録を撮っておけば良かった」言った一言にあります。僕はその言葉を聞いて、どんなものが出来るかは想像できませんでしたが、あたらしい試みだな、と思いました。ご本人は覚えていらっしゃらないようですが。
沢:全く記憶に、ないです。(笑)ただ、「ムサビと絵本」展が終わった直後から「背文字が呼んでいる 編集装丁家田村義也の仕事」展の準備が始まり、最初の撮影を行ないました。図書館の書庫でした。
河:最初は山田助手に撮ってもらおうと考えていたのですが、現在、芸術文化学科研究室には3名しか助手がいないため、手が回らないということで、教務補助さんの渡辺真太郎君に撮影をお願いしました。すでに80本以上のテープを撮りました。
・今回の展覧会は「場所を意識した展示を行なう」という部分で例年の助手展より一歩踏み込んでいて、それを受けて「リニューアル」としていますが、どのようなプランをお持ちですか?
河:場所を意識しているかどうかは、図書館と言う場所に限定するとかなり微妙です。ただ、自分の立ち位置としての場所と捉えると、助手展への芸文的な一つ答えを出そうと考えています。芸術文化学科の学生を対象としたいですね。こんなこと考えているんだ!って。(笑)
山:芸術文化学科の学生は100人が100人違う興味を持っていると思うんです。河野さんは、どう思っているか分かりませんが、何かに統一されていたり、芸術文化学科的な色があるとは思っていないんです。一人一人、全く違う方向に向いている興味に対して、どのように対応できるかが、大切だと思っています。学生だった自分と、研究室に入ってからの自分を比べて、考えました。
河:僕もほぼ同感です。卒業制作なんかを見ると、分かりやすいと思うのですが、全く違うジャンルのものが並びます。非常に悪く言ってしまうと「纏まりがない」。たぶん、それが芸術文化学科に対して、「あの学科は何をやってるの?」という疑問に繋がっているんだと思います。ただ一見バラバラに見える学生の指向も「編集」という言葉でくくると、見え方が変わってくるです。僕が思うに、芸術文化学科の学生は非常に編集者的思考が強いように感じます。学芸員になりたい、デザイナーになりたい、プロデューサーになりたいと彼らは言いますが、その気持ちに共通するのは、自分が作品を作って見せたいと言う気持ちよりも、それぞれの周囲にある要素を、「編集」したいという気持ちだと思うんです。僕も今回、リニューアル展に出品する際もそのような考えで臨みたいなと。
山:そうですね。この考えで、実際の展覧会にはあまり関わらず、撮影も行なっていない僕が、編集する事で、展覧会の記録として一つ残せる事があるのではないかと、考えています。河野さんや沢田さんが撮影したものを編集すると、非常に教科書的、または簡単に展覧会ができてしまうという映像が出来てしまうんです。うまく編集されてしまう。でも本当の展覧会はもっと時間と手間がかかっている。そのバランスをどう編集していくか。それが大切だと思います。編集しすぎないように編集する。例えば何も話していない映像だからといって、その留まっている時間に意味がないかと言えば、そういった時間にアイデアとか構想を練っている訳だし、そういった時間の積み重ねの先に展覧会があるんだと思います。まだどうなるか分かりませんが。
河:上手くまとまらなかったら、おとなしく諦めます。
山:僕は残りの2年間静かにしてます(笑)。
沢:先ほどから「編集」という言葉がよく出ますが、展覧会を作る事はまぎれも無く編集であって、空間へ「作品」「情報」「人」を落とし込む行為です。今回の助手展は「リニューアル」ですよね。基本的に展覧会準備は一本道で、やり直しが聞かない。そういう中で僕たちはやっています。でも、今回は記録を撮影しているので、その記録をつかって一つの「再編集」ができるんです。担当の僕の手の離れたところで、河野君と山田君が再編集をするっていうことが、とても楽しみです。
展覧会を見た人も、見ていない人に対しても、どのように見せるかという部分が、「再編集」であり、「リニューアル」だと思います。展覧会を見た事がある人には「ああ、そうなんだ」と思わせることができて、見ていない人にも何か伝える事が出来るような、二重の目的を持った「再編集」を待っています。
*映像集「展覧会をつくる愉しみ」について
この映像集は作品の性質上、学内からのみ閲覧できる設定となっております。
9号館1階webスペースなど、学内のパソコンからご覧ください。
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)