木谷篤助手(デザイン情報学科研究室)インタビュー
聞き手:白石学専任講師(デザイン情報学科)
・画面やプロジェクタで投影している映像が変わるのと、実際の物が(動いて)変わることとの魅力の違いは?
木:画面の中で完結しているものだと、見る人が見れば仕組みが分かってしまう、それを実際の物の動きに変えたからといってあまり変わらないのかもしれないけれど、やっぱり、なんというのかな…、コンピュータを使っているのだけれど、そのコンピュータを見せないというのかな。パソコンらしさがない方が、自分としてはいいんですよ。
・コンピュータらしさとは?例えばどんなところですか?
木:Flashの画面をプロジェクタで投影したり、とかいうのは、何かありきたりすぎているという気がする。その見せ方にはオリジナリティがないし、仕組みが見えてしまうのは、あまりおもしろくないと思っている。それもまた、なかなか難しいんですけど…。
・大学に在学中の頃は何をされていたんですか?
木:何をしていたのかなぁ…。あまりデザイン的な勉強はしていなかったですね。情報の教員免許用の授業をとっていたので、主にプログラミング的な勉強をしていました。だから、あんまりデザインとかはやっていなかったですね。学生の頃にそういうことをやっていたので、今も、例えば人の動きをデータ化して、それをアウトプットすることだったりが、おもしろいと思っています。
・その人の動きだったりとかには、(木谷さんが見つけた)法則だったりとかはありますか?
木:とくにないですね。対象はなんでもいいんですよ。例えば、こう、手をかざして、その手の形を明度から数値化するとか、周りの音の高さから数値化するとか、なんでもいいんです。例えばいまのiPhoneのソフトウェア制作キットを使うと、iPhoneの傾きなどの動きで操作する簡単なゲームを作って、それをソフトウェアとして売ることもできますよね。そんなことをやってみてもおもしろいと思います。
・そのようにデータ化することに魅力を感じているのですか?
木:そうですね。物の動きをデータ化して、それをまた、アウトプットする。そのアウトプットするところに何か面白さがあればいいと。
・その出力(アウトプット)するかたちについては、なにか指向というのはありますか?
木:う〜ん…。さっきいったように、あまり画面の中で完結しないように、コンピュータっぽさを見せないようにしたいと思っているんですけどね…。(白石先生へ向けて)あまり、対談っぽくなっていないんですけど…これ。大丈夫ですかね(笑)?
白:大丈夫じゃない。いいと思いますよ。
・さきほどのようなお話は、よく白石先生に相談されたりするのですか?
木:たまにします。技術的な話になると、井上先生(デザイン情報学科)。あと、佐藤先生(デザイン情報学科)とかにもさせてもらっています。
・白石先生とはどんな話をされているのですか?
木:えっ。「何を食べに行こうか」とか(笑)。
白:恋愛とか(笑)?
木:そうそう、そうそう(笑)。あまり技術的な話は…(しない)。あ、でも、たまにね、Flashの本を見せてもらうとか。
白:そうね。でも、主には「やっぱり恋愛はインタラクティブだから」とか(笑)。「今は引け」とか、「今は押せ」とかね(笑)。
木:ホントに何の話をしているんですかね?
白:いや。95%は恋愛相談だね。
・残り5%は?
木:残り5%はメシですね。
白:ですね。
木:いや。4%はメシで、1%は…、
白:メタボの話しね。
木:そうそう。「俺らちょっと太りすぎ」みたいな。(独り言で)いや、95%ってことはないよなぁ…。
・あ、やっぱり数値化に興味があるんですね(笑)。
木:いやいやいや。
・いや、やっぱり、そこにこだわるのがすごくおもしろいですよね。例えば、人の動きを数値化してアウトプットしているものの中で、いま興味があるものはありますか?世の中に出回っているものの中でだったり、誰かの作品でもいいんですが。
木:う〜ん。物というわけではないんですが、中村勇吾さんの作品だったりとか。ああいうのはいいな、と。まぁ、自分ではあそこまでやるのは到底無理ですけど…。
・どのようなところがおもしろいと思われたんですか?
木:インタラクティブで、一つ一つの動きが洗練されているところ?
・動きの質はやはり大事なんですか?
木:大事ですね。でも、それをあんまり感じさせないで見せるやり方もあると思うんですけれど。
なんというのかな。まず、僕のプログラミング技術では、あまり洗練された動きはできないんですよ。だから、タイルの作品(2006年制作インスタレーション作品「tile」)とかで組まれているのは簡単なプログラミングで、頭のいい人ならどのような仕組みになっているかわかかってしまうんですよ。このタイルを踏んだら、ただ、四角の色と形が広がっていくだけなんですよ。だけど、あの作品でいうとそれで十分なんです。すごい画像が出る必要はなくて、ただ色と形が出るだけの簡単な技術だけど、そのほうがシンプルで(見る人、参加する人にも)わかりやすいから。
・私は、例えば中村勇吾さんの作品のようなものだと、「なんだか難しそう…」と参加するまでに時間のかかるタイプなんです。だから、さきほどの「シンプルでわかりやすいから」というのはよくわかります。仕組み的なことをつくるのも大事だけれど、そこに参加する人に分かりやすいというのも大事だな、と思います。
木:例えば、コンピュータに通じていて四六時中インターネットをやっているような人からすれば、Flashで作られているサイトでもとくに問題はないんだけれど、使ったことがない人にしてみたら「どこを触っていいかわからない」ということが起きる。さっき話していた、ある物をデータ化してアウトプットするときに、あまりコンピュータっぽく見えないようにしたい、というのも、そういうことがあったからなんですよね。要するに画面の中で完結しているものではわかんない人にはわかんないというか。それよりは、実際に物が動いているほうが、誰にでもわかるしシンプルだし、いいなと思っています。
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)