早瀬交宣助手(視覚伝達デザイン学科研究室)インタビュー
聞き手:陣内利博教授(視覚伝達デザイン学科)
・山手線のアニメーションの手法を導き出していったのはどのあたりからですか?
早:大学2年生のときですね。世には出してないんだけど、個人的につくっていたアニメーションがあって、ほんと、最初の最初くらいですね。そのときは顔を使ったアニメーションをつくっていたのですけど、顔のパーツを少しずつ入れ替えていくと表情がどんどん変わっていくのがすごく面白くて。実験的というか、これ面白いなって。それの応用だったんですよね。
・その時から写真のコラージュだったんですか?
早:その時は手法のひとつとして使っていただけで、それだけでつくっていたわけではないんです。手がきもやってましたし。でも、その見え方が自分の中で新しいなっていうのは思ってて。その後、4年生の時に、時間と脳科学、みたいな…。
陣:でかいタイトルだな(笑)。
早:その当時から言われていたことなんですけど、脳がすごくいい加減にできていると。正確に処理しないからこそ、アバウトに処理できるからこそ、情報量が少なくて済むっていうか。脳が処理できる情報量っていうのはたぶんそんなに多くなくて、そのためにいろんなものをアバウトに捉えているからこそ処理できている。そこでちょっと時間の話になるんですけど、僕たち現代人に限ったことでいえば、かもしれないんですけど、ひとつの流れとして捉えている。でももしかしたら時間は一瞬一瞬断続で、高速で連なっている層みたいなものかもしれないんだけど、それをいちいち処理していたら処理しきれない。1本の線として捉えちゃったほうが楽だし、捉えやすいっていうこともあって、捉えてるんじゃないかなって。時間の流れっていうものに対する疑いの目を持ってみようっていうことがあって。それで、あのコラージュのカクカクした動きが、高速で見ると流れているように見えるけど、断続しながら流れているっていう、不完全というか、スムーズな流れじゃないよっていうことが感じられたらいいなと思いまして。
・早瀬さんは時間についてどう思われてますか?
早:時間の断続ですか?もしかしたら、そうじゃないかって。証拠はないですよ。当たり前すぎて感じられないと思うんです。アニメーションとかやっていると、1枚1枚の絵が層になっているだけなんだけど、それを連続で見ると流れに見えてしまう。動きも含めて、時間が流れているように感じるというか、止まっていないというか。あれって、1枚1枚を見ているっていうよりは、連続した絵で出来たものを見てるっていうか、それが動きになるんですけど。1枚1枚をいちいち処理してないと思うんですよ。
・見る人に「読み解いてほしい」っていうのはありますか?
早:僕が思っている以上のことを見た人が考えてくれることがすごくうれしいです。びっくりしたのが、つくって展示した後の話で、いろんな人に後から言葉を与えてもらった。僕は僕の視覚的な面白さっていうのを追求しようと思ってつくっていたわけで、それを見た人が、また全然違う、ちょっと哲学的なところにいったりとか。話して全然理解できなかったですけど(笑)。
・早瀬さんが視覚的に面白いと思った作品、どんなものがありますか?
早:クリス・カニングハムの『ラバージョニー』ていう作品がすごく好きです。自分の体をスキャンして、アニメーションとかいろんな技法を使って繋ぎ合わせてるんですけど、見たことない感じでしたね、当時は。
・繋ぎ方ですか?それとも、見えないものが見えたから?
早:いや…見た、ことがないんですよ(笑)。見たことなければ何でもいいかっていうことはないけど、視覚的にショッキングだったのかな。そういうのを見つけるのは大変だと思います。前例のないものをつくっている時は、前例がないから、辛かったですね。孤独になるというか。
・制作中、完成のイメージはありますか?
陣:撮り始めたときにあったんじゃないの?あの場合。
早:そうですね、おおまかにはあったかな。
陣:俺が聞きたいのは、曲とのマッチングがどの段階だったか。
早:最初に曲をつくってくれる人に短い映像を見せて、3曲目くらいでOK出したんですけど。ただ映像とのからみがあるので、映像に合わせて再編集したりしました。昔、映像を先につくってそこに音をあてたことがあったんだけど、全然うまくいかなかったので。イメージだけ与えて曲をつくってもらって、お互い歩み寄ってタイミングを合わせていくっていうのが一番いいのかなって。
陣:そこはすごく早瀬の作り方の特徴だよね。
interviewer
高橋奈保子(視覚伝達デザイン学科研究室助手)
黒澤誠人(美術資料図書館)